「世相話題での事業者の企業意欲に関する雑感」1

(この投稿は、AYSA西部部会HP開設にあたり元AYSA西部部会会員大段恭二氏の企業指導における感想として寄稿頂いたものです。)

 令和4年2月26日

 大段恭二(元AYSA西部部会会員)

 昨今コロナ禍で社会が振り回されており、第6波も到来して、県内から他県に赴いて活動、旅行などの行動も制限されており、この2年間余りは自宅付近での自粛生活で、庭仕事などで過ごしている状況であります。しかし多くの事業所では生存持続のために経済活動を重視して、事業活動を活発に、開発・営業を行う中で、特に大川市、日田市の企業から依頼を受けて現地に赴いて製品開発の支援に関与するようになました。これらのことから地域の産業振興に役立たせてもらうことを主眼として毎月事業所訪問を行っておりまして、地域産業の活性化で諸々支援に努めており、その時の状況と地域特産物の取り組みについて紹介するとともにその経緯などを記述してみました。

特に最近の世相話題において、世界的な課題として①「地球温暖化対策の問題」、②「海洋プラスチック廃棄物の問題」、③「ウイルス対策の問題」、④「貧富の格差の問題」、⑤「AI,デジタル化推進問題」で、国内課題として⑥「地方創生問題」、⑦「経営革新の課題」、⑧「3K労務と原料枯渇問題」、⑨「核家族と少子化問題」、⑩「高齢者介護施設充実の問題」などを取り組んでいる事業所さんの製品と、その話題とを関連付けて製品の事業化を推進させて、経営変革と新商品の創出に邁進されている。その状況について傍に立って見つめた様相を雑感として示してみたい。

 1)地球温暖化対策の問題からの「海苔の破砕機」の事業化推進

 大川市は筑後川の河口で有明海に面しており、大川市の近郊には柳川市、みやま市、佐賀市の一大海苔の生産地があって、個人海苔養殖事業者がうごめいている状況である。海苔は11月から3月の5ケ間に有明の干潟での2~3回養殖と採取が行われており、個人海苔養殖事業者においては早朝寒い中網に養殖されて成長した海苔を刈り取り、直ちに微細破砕し、乾燥した海苔シートに仕上げる作業を業務としておられる。刈り取りと破砕の作業の効率化と製品の高品質にするには、刈り取り時、微砕時での刃物の性能が美味しい海苔の品質要件になっている。その刃物を製造しているのが大川市のO社であり、この地域ではO社の刃物が性能から高い寡占率を示している。

特に採取した海苔を細かく均一に細胞面で裁断できて、微砕と裁断の状態によって味の良否と表面のつやと色に関係しており、しかも長持ちのよい製品になることである。O社は、海苔関連製品として養殖網からの海苔摘み取りの装置、刃付プレートの新型機能微細破砕装置の刃物を手掛けており、これらの刃物製品に対して販売促進と技術防衛に対して開発製品の権利は既に取得されている。O社の刃物商品は一般の他社メーカーの製品と比較してその研磨に容易で,海苔の切れ味が優れており、生産性、品質的、環境的における優れた特徴も明確になっている。とくに採取した海苔の処理で多くの洗浄水を使用するが、排水がクリークにおいて赤色に変色して大きな問題ともなっている。その排水処理に有効でもあり、環境に海苔微細破砕装置付き刃物の切断プレートが大きな役目を果たしていることも明確であった。これには海苔の切断刃型プレートの受け板が大きな役目を成しており、これらの刃物形状は長年の経験と工夫から新規高機能の刃型プレートを生み出したものである。

特にO社においては養殖網から海苔を摘み取る刃物付き装置、及び海苔生産関連商品として、ユーザーから高い評価も受けて、高い市場を維持できるようになっているが、特にこの刃物のプレートは円盤状に5~20mmの貫通穴数百個以上を螺旋状に配列して、しかも穴形の内部に傾斜を設けて、刃部に角度を鋭角にして、微細で均一な生海苔の細胞群を直角的裁断できる刃型形状にしたものであった。 

一方海苔養殖業界では、地球温暖化により、有明海の海温が上昇して、また天候の不順などで海苔の生育不良を来しており、近年不作の状態が長く続き、国内需要を満足にこなす状況ではなくなっている。国内の生産性を上げることも重要であるが、特にお隣の韓国から安価なものが輸入する状況になってきている。現在では食用日本のりと韓国のりには大きな違いがあり、破砕方法に違いがあることが分かってきている。そこで韓国の海苔養殖業者が日本の海苔と同じような味、触感を持つ商品になるものを栽培してのり製品を製造することを始めてきているが、日本と同じ触感の海苔を製造するには、養殖海苔から乾燥海苔の状態に適した原料海苔に仕上げて行く必要があり、日本の海苔摘み取り機械を使用する必要になってきており、韓国の海苔業者からO社の海苔裁断機械の問い合わせが頻繁に来るようになっている。 

それに対応して韓国海苔業界に機械を販売している。しかし日本の海苔裁断装置は韓国のものより性能が数倍高いが、価格もそれ相応に高いものである。現在韓国は日本の海苔裁断機の刃物、プレートを購入しているが、そのうち日本の裁断機を模倣して自国で生産して販売を行う懸念もある。この対策が今後の悩みの種になっている。気候変動は単なる温度上昇の現象でなく、環境と合わせ付随している経済構造にも大きく変革をもたらすことをしみじみと感じさせるものであった。 

2)海洋プラ廃棄物の問題からの「木製ストロー・木製コップ」の事業化 

日田木材の特産品として蒲鉾板などを製作・生産しているF社は、最近プラスチックごみの環境汚染で海洋生物などに悪影響を与えることから、全世界的にプラスチック製の食品容器類の使用が全面的に禁止の方向に向いており、プラスチック製以外では海洋生物に悪影響を与えることが少ない紙、木製の食品容器を使用する方向に向いている。小型の容器で圧倒的に生産量が多いストローの使用は禁止の方向にある状況で、代替品の対応が緊急の課題になっている。そこでプラスチックに代わるものとして、紙製のストローが提案されているが、価格、性能面で十分なものが得られていない。日田地域では杉、ヒノキの木材産地であり、下駄、食器など種々の木材商品の産地にもなっており、この日田地域の特産として木製ストローと、木製コップの工作もできて、商品として量産的製造技術の確立も地域的に期待できるものであった。 

最近の新型コロナ感染禍から種々の流通商品の需要が減退してきており、木製ストローと、木製コップの需要もその一つであり、若干低下の傾向になっているのが現状である。F社は、木材の薄板の加工技術を基にして木製のストロー、木製のコップなど有能な食品用具を製作するにおいて、長い経験において木材の高い加工技術を持っており、優れた木製ストロー、および木製コップの市場に見合った製造技術を創出しており、生産型の製造方法に関する技術も手掛けている。木製ストロー市場に満足させるためには、それらの生産性をさらに高めて、コスト低減の課題を解決することを主眼としてその方向で苦慮されている。この事業を完成させて市場での顧客に対応できる安価で多数量に生産できる装置、技術、体制つくりを早急に高めて行くべきと思っている。 

現状の木製ストローと木製コップが若干の顧客の要請により上市し始めているが、コロナ禍前では大手の商社、百貨店、ハンズ店、ホテルなどから注文を受けて、約10社においては固定的な需要者になる可能性も高かった。コロナ解決後には、薄板からのストロー、コップの製品に対する生産体制を確立することも必要となるであろう。大分、九州地域の新聞においてトピクス記事として、また全国的規模のテレビ放映と東京展示場の出展にも話題として提供されて、一躍注目製品になっており、多くの問い合わせが届てるとのことであった。しかし現在のコロナ禍の中では、以前のような活発な動きがみられず、将来に向けて体制作りの動きがあるようである。

F社の木製ストローと、木製コップの製造は、木工加工、およびその漆などの塗装術などの木材加工の基本技術を活用することによって、0.15~0.5mmの経木を巻いた筒状容器類に巻き上げるものであり、その手法を基に生産的手法になる自動巻き装置で生産する技術を高めているが、まだ十分な生産技術の確立はなされていない状況であり、特殊な需要者ではあるが市場の固定化も生まれて、木製ストロー、木製コップ製品も上市商品として展開されている場合には生産的製造できる体制にしておくことが肝要であろう。また数量的に生産できる装置、及び手法技術の確立は専門メーカーとの共同開発で進めて行くべきである。さらに販売促進と製品のブランド化のための商標「ITATTE」名称を取得されており、関連する種々のパンフレットによる販売活動には寄与して、多数の問い合わせが来ており、現状でも木製ストロー、木製コップには多くの需要者に関心が持たれているようである。海洋プラスチック廃棄物の問題がプラスチック製品から木製容器への転換が必修な課題になっており、木製ストロー、木製コップの供給の可能性についても関連需要者皆様にも浸透してきているのが現状のである。他社の参入に対して独自の権利化で防御し、模倣品の防止と製品のブランド化のために、確実な知財の確保が事業推進に寄与することに間違いないと信じている。 

3)ウイルス対策の問題からの「表面処理したメラミンテーブル」の事業化

大川市のM社は、国内での有数の家具製造設備を持ち、創作を高めた機能性家具メーカーであり、大川市近郊での製造面でトップ企業でもあって、高級品から中級品の機能的、意匠的商品と幅広い家具の製造・販売を展開されている。M社にては自社のオリジナル機能商品として、引戸に緩和開閉機能と、ロック機能を取り入れた家具類と、特殊材料を使用した多種多彩家具など多様な機能を所持した家具を製造・販売されている。一方M社の創作商品として新規の材料と金具、引出のロック機能付き引出家具、据え付け可能な組立てた新作マルチダイニング収納家具、耐震性天井調整可能な食器棚、大型箱状家具プッシュタイプの引出し家具、スライドカウンターの取出し箱物家具、装飾性ガラス面テーブル、引戸でロック機能技術の家具、また磁着可能な化粧板を取付け家具、天板伸縮可能なテーブルなどの非常に幅広く種々の機能性家具を創出されている。

一方M社では社員に対しても知財の重要性を植え付けられているようであり、積極的に社員から提案・創作を行うように仕向けており、機能的、デザイン的に面白い商品を種々創出されている。それら社員創作での商品群も販売拡大の展開で実施されている。さらに営業面でもM社のブランド化と販売活動に対して商標権の知的財産の有効活用を行い、事業拡大と販売促進に貢献させている。

またM社オリジナルの商品として、自由に顧客に選択させる手法の構築とその販売拡大を進めている。また意匠性と機能性を持たせた顧客志向家具として独特の販売促進法を確立しており、さらに独創性家具の創作も積極的に推進されているようである。最近の事業形態として、優れた材料を起点にメラミン素材とガラス表面素材の特性を活用した家具の製作に邁進されており、これらの特質原料で仕上がった新家具商品の販売戦略も構築されるとともに、新規機能性と意匠性を兼ね備えた家具の創作により販売拡大も推進されている。一方今までの部分的な機能の特徴から特殊的、或いは全体的な特異的機能を発揮できる製品へと展開を始められており、最近世相にマッチした特殊な独自の家具製品の開発も行われている。

現在のコロナ・ウイルスの蔓延から個々の生活環境も変革しつつあり、安心安全を起点とした家具において今までにない無機質感を持ち、温度、衝撃から安全で従来木製家具にない、模様を呈する材料を使用する家具、或いは細菌、ウイルスの感染・蔓延による生活環境の安定化させることを狙って、抗ウイルス性を持つ特殊材料の使用した家具が期待されている。家具表面に抗ウイルス性を持つ材料を張り合わせて、細菌、ウイルスの感染に若干効果を示す家具を創出している。

まずM社の目玉商品として、前記に示したような特殊機能を持ち合わせるとともに家具の天板、前板、戸板に注目のガラス面で独特の色彩模様を呈する無機質模様を示す家具製品と、また酸化チタン、トリアジン系成分を含有するメラミン面に殺菌性を持つ表面処理を施した天板を有するテーブル製品に関して開発を行っており、この家具における機能の特徴化に専門的機器的分析により技術特徴を明確にされている。

社内的に新規事項を積極的に取り入れて、チャレンジ精神が旺盛であることが現在の地位にあるものと感じており、大手家具販売企業の大塚家具、太陽家具が衰退状況であるにも限らず、元気に頑張っていることは会社の組織と人材のもとに精神的要件を兼ね備えているものと感じている。

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