2025-1-2(AYSA西部部会会員 MYZ)
令和6年の年の瀬、大掃除もソコソコに済ませコヒーを飲みながら大晦日のテレビ番組を確認していたら、NHKBS「プレミアムシネマ」午後3:50から黒澤明監督(脚本)の「七人の侍」の放映があるのを見つけた。この映画は1954年4月26日に東宝の配給で上映が始まったと記されている。上映時間は207分(約3時間半)である。
長時間の放映であるが「フルバージョンで是非観たい!」という気持ちがフツフツと湧いてきた。何故だろう?? しかもこの映画は約70年前に公開が開始された作品である。途中何度かの再上映もあったのだろうが、私の記憶では物語の継ぎ接ぎしか思い出せていなかった。この映画の撮影方法や登場人物の個性等は様々な映画情報番組でも取り上げられていたと思うが。よくよく思い出してみると私は、学生時代「三船敏郎主演」の映画(用心棒、椿三十郎、天国と地獄・・・・・)を必ず観ていたという記憶が蘇ってきたこともあるのかもしれない。
午前中の用事を急いで片付け、その日の午後からは特に予定を入れず放映時間にテレビのチャンネルをNHKBSに切り替えた。この映像はもちろん白黒である。最初に「七人の侍」の太字が映し出されいよいよ始まるのだとワクワクした。
映像は、突然馬のひづめの爆音から始まった。それは戦国時代盗賊となった野武士が、ある農村を襲撃しようとして山の頂に現れた騎士団の爆走であった。その山の頂きに集まった野武士の頭が村落を見下ろしながら、ふと「秋に収穫したコメは略奪したばかりだ。今この村には何も残っていない。春の麦が取れるまでまとう!」と一端引き上げる。その話を盗み聞いた村人の一人がみんなに伝え「どうするか?」と知恵を出し合うが、中々まとまらない。そんな状態の中、村の長老が、戦う事を選択し、「食い詰めて腹を空かせていた侍を捜し」雇うことを提案する。
力を貸してくれる侍を求めて宿場町にでた村人四人は木賃宿に滞在しながら、白米を腹一杯食わせることを条件として侍に声をかける。ことごとく断られ途方に暮れるが、ある事件をきっかけに初老の勘兵衛(志村喬)という侍に村の事情を話し、引受(村人達のおびえを見逃せない侍の自負心なのだろうか?)をえた。でも彼は一人では無理であると。腕のいい侍が七人必要だという。 そこから六人の侍集めが始まるのである。
ソコソコ腕のある侍を集めることにも様々な物語がある。私は、勘兵衛を演じる志村喬があれほど素晴らしい演技をする役者だとは思っていなかった。若い頃彼が演じる映画を何度か見たような気がするがあまり印象には残っていない。この年齢になって彼の良さが分かるようになってきたのも不思議なものだ。
勘兵衛の人徳で侍は何とか六人となり、その農村へと出発する。その一行についてきたのが三船敏郎演じる菊千代(元は農民との設定)だった。これで七人となり、村に到着するも、当初は村人に警戒され受け入れられなかった。あることをきっかけに七人の侍たちの誤解が解かれ、勘兵衛は知性と優しさにあふれ冷静リーダーとして戦略(何かあると、そのタイミングに頭を撫でるクセを演じる彼に可愛さを感じる)を担い、そして村人への戦術と戦力向上には菊千代がそれぞれ担う等、着々と戦の準備をする。ここで前半が終わる。
後半は、初夏。麦刈りが行われしばしの平和の束の間、ついに物見(偵察)の野武士が現れる。物見を捕らえて先手を打ち一時的に野武士の侵入は防げたものの、野武士との戦の中で村人達の離散や疲弊も激しく、最後には野武士13騎との死に物狂いの決戦となった。この戦の場面での撮影が素晴らしい。当時としてはこの撮影は困難を極めたのではないかと想像する。複数のカメラで同時に撮影する、マルチカメラ方式が採用されたとのことである。
菊千代は、野武士の頭の放った銃弾によって撃たれるが、最後の気迫で追いつめた頭を刺し殺し自らもその場で果て、野武士はついに壊滅する。しかしこの戦で侍七人のうち四人が亡くなりその剣を刺した墓標が山の頂上に作られていた。
野武士を撃退した村には平穏な日常が戻り、晴れ空の下で村人たちは田植えにいそしむ。それとは対照的に、その様子を見つめる生き残った三人の侍の表情は浮かない。四人の墓標を見上げながら、勘兵衛は「今度もまた、負け戦だったな」とつぶやく。勘兵衛は最後に何が言いたかったのだろうか?
ところで、この作品は世界映画史上不滅の黒澤監督代表作品として絶賛されている。登場人物の個性も傑出している。黒澤監督はそれぞれの人物や風貌、性格、衣装などを熟考してキャラクターを創造したとのこと。そのイメージを実現したのが、日本を代表する名優たちであった。志村喬(勘兵衛)、三船敏郎(菊千代)、加藤大介(七郎次)、稲葉義男(五郎兵衛)、千秋実(平八)、木村功(勝四郎)、宮口清二(久蔵)の七人である、夫々に私の青春時代に活躍した役者だ。今回の放映の中で、かすかに往時が偲ばれる演技ぶりが浮かんできた。しかしこの度の彼らの演技は往時に私が感じていたイメージとかなり違う。それは、私が年齢を重ねてきたことからくるのだろうか?
いずれにしても、NHKBSのプレミアシネマを検索してみると往年のいい映画を放映している。見たいのがあるか?時間があるか?等考えて再度チャレンジしてみよう。(完)
《お正月雑感》
MRNさんの英語をみて思い出しました。
NHKの正月番組で、コメディアンの春日さんがカタマリで覚えるchunkでマスターした英会話でアメリカを旅行する所。
大した物だと思いました。度胸は勿論ですが、会話体は読書とは大きく違う別物。別にトレーニングする必要がありそうです。意味の想像はつくがすぐには出てこない。しかし英会話は私には余り動機はないですが。
それとお笑い番組は馬鹿にして見ませんでしたが、タモリ、鶴瓶、ウッチャン一緒のトーク番組、抱腹絶倒でした。特に80歳に近いタモリさんの面白さが爆発。
笑いは長寿に良いのでもっと見る様にせねばと思いました。
最後に。万博の年ですが、YouTubeで見る各国のロボット開発のすごい事。万博の日本のロボットきっと見劣りしますよ。テスラなど50万円で売りたいとの事。またレーザーなどは使わずAIのみで低価格自動運転車もそろそろ出て来そうです。大丈夫か日本メーカー。
MYZさん
ナヌ? 「七人の侍」に関する投稿? 私にもコメントさせて!・・・との思いで投稿します。story の解説、出演俳優陣に関する記述はperfectですね。さぞや熟考されたことでしょう。I quite agree with you! です。
三船敏郎の男らしさは言わずもがな、志村喬の凛々しさ、宮口誠二の爽やかさ beyond description です。
To be honest, 私も黒澤明の大ファンで黒澤映画のDVDを、第1回の「姿三四郎」から第30回の「まあだだよ」 までのすべてを持っています。そのうち私が好きな作品は:
1.七人の侍 2.用心棒 3.椿三十郎 4.天国と地獄 5.悪い奴ほどよく眠る
かな。 痛快、勧善懲悪、奇抜、豪快、ダイナミック、反体制の反骨精神 は堪らないです。白黒映画の光の使い方は絶妙です。 関心がおありの方には、喜んでDVDをお貸ししますよ。
2025.1.3 MRN 拝