久し振りにJR「呉線」に乗車して故郷のJR「宇部線」に思いを馳せる

2025-3-14(AYSA西部部会会員 MYZ)

 何年振りだろうか?今回で3度目の呉線乗車である。最初は、社会人になって3年目(55年前)の夏季休暇に勤務地の大阪から実家のある山口に帰省時、山陽本線(当時の新幹線は岡山まで)の広島駅から呉線に乗り呉まで行き兄の自宅に会いに行ったことがある。兄はバブコック日立の呉工場に勤務し、呉市の山の手にある住宅分譲地の焼山に新築の家を建て住んでいた。その時兄とやり取りした詳細はあまり覚えていないが、今思い返せば兄に会っていろいろ社会人としての苦労話を聞いて欲しいという気持ちがあったのだろう。

 2度目の呉線乗車は、その兄の次女の結婚式が呉駅前のホテルで催されるのに招待され、東京(その時は東京勤務)から新幹線で広島駅、そして呉線に乗り換えての旅だった。

 今回はそれ以来であるから30年振りになるのだろうか?新山口駅から新幹線で広島駅乗り換えて呉線に乗車した。過去に新山口駅での駐車場探しの失敗を教訓に今回は出来るだけ早めに自宅を出た。心配しながらの運転であったが、なんとか空車の駐車場がみつかり事なきを得た。そのあとすぐに満車になっていたので次の新山口駐車場利用はそのリスクを常に意識しなければならない。

 ところで、呉線に乗車し車内の雰囲気を観察しながら宇部にUターンして何度も利用している宇部線について思いを馳せた。それは、同じ海岸沿いを走るローカル路線でありながら余りの違いに驚いたのである。何故だろうか??

 呉線はよくよく観察してみると、広島から3番目の駅の海田市までは山陽本線を走っている。私が乗車した列車は岩国発の呉行であったのでもちろん広島駅で降車する通勤・学客も多かったが、海田市での降りる乗客も多かった。乗り換えの必要がないのだ。さすがにJR西日本管轄の単線では乗降客が一番多い路線とのことである。

 ここが宇部線と大きく違う。同じ山陽本線、新幹線と連結するローカル線でありながら乗客への利便性がないことも頷ける。4,5年前私が福岡に所用で行くとき試みにこの宇部線を利用して出かけてみた。今の居住地の西岐波の床波駅から博多駅までである。その当時は宇部線で宇部新川、宇部、そして山陽本線で下関へ、そこで乗り換えで小倉、小倉から特急で博多へすべて在来線で、時間も節約でき低料金での福岡行である。便利さを享受できたが今は運転されていないようである。(その理由はわからない?)

 宇部線の利用客を増やすにはJR西日本や行政で様々な施策が図られているのだろうが、私は呉線と同じように宇部線も大きな価値を持った路線だと思うが、乗降客の多寡は何が違うのだろう?

 具体的には、新山口駅や宇部駅を起点とした山陽本線や山口線と直通で利用できることが大きな誘因力となると思うが、今は車の便利さを味わってしまっているので難しいのかもしれない。私の学生時代には宇部から山口に汽車で通学していた学生が多くいた。宇部線近郊にお住いの方々も例えば山口、防府、周南へ、西では宇部駅から山陽本線でせめて新幹線と繋がる厚狭方面へ、夫々に通学や通勤されている方も多いと思う。新山口駅の南口(新幹線側)にある民間の駐車場は少し時間を外すと満車となることはそれだけ山陽本線、山口線への乗り換えなしの需要は多いと思うが、難しいのだろうか?

 宇部線の利用客を増やす方法として、やはり山口宇部空港への足であろう。この近隣の駅は草江駅である。山陽本線、山口線と連結していればもっと利用客も増えるのではないか?問題はこれだけ車社会の便利さを味わってしまった私達は車を離せない。その一方山口宇部空港の駐車場は駐車料金が無料である。シーズンになると無料駐車場の空きペースを捜すのに苦労する。種々方法があると思うが、駐車区域の一部を料金の上限を設けるなどして有料化し、出来るだけ公共交通機関の利用を進めたら宇部線の草江駅の利用客も増えるのではと邪推するが果たしてどうだろうか?

 ところで、呉線の海が見えてくるのは呉ポートピア駅からである。ここは海水浴場にもなっているのだろう。海岸がキラキラし、すぐ近くには島々が並ぶ風景は車窓から眺めていても気持ちがいい。造船所や軍港としての面影を残した路線を呉線のイニシャルマーク「RED WING」号が走る。鉄道ファンにとってはたまらないだろうと思う。この日も隣の席で父親とその息子の2人が楽しいそうに会話している姿をみると「やはりな!」と感じる。

ところで、近年宇部線の車両はカラーリング変更されてきている。イエローカラーからトリコロールカラーへと魅力ある車両である。鉄道ファンにとってもワクワクする車両だと思うが?

宇部線沿線は魅力ある路線だと思う。例えば、阿知須駅に近い「山口きらら博記念公園」では様々な施設が整備され大きなイベントも開催されている。もちろん広大な駐車場が隣接しているが、イベント時には交通渋滞が発生している。(近年では新山口駅での新幹線の最終便に間に合わなく新山口で一夜を明かしたとのケースもある)

岐波駅では遠浅の海岸が楽しめる「キワ・ラ・ビーチ」(海水浴場)もある。

常盤駅ではシティ型公園として親しまれてきた「常盤公園」もある。その他探してみればいろいろあるのだろうが?何故、その駅を利用しての魅力を感じないのだろうか?これも中々難しい。考えればきりがない。

私が宇部にUターンして20年、宇部の街も大分変ったが、宇部線は1時間に1本、多いい時間帯では2本がせいぜい。なぜこれほど落ち込んだのだろうか?本数の多寡が先か乗降客の多寡が先か、中々難しい問題である。JR西日本も民営化による営利企業となり採算の取れない路線はどんどん縮小してきている。私は東京で働いているときに、よく取引先の社長から言われた。「貴方は山口出身だそうだが、山口はいいのう!首相も多く輩出し、公共事業も予算が多く張り付けられて道路網整備が全然違う」と。

山口県の車社会はこのことが要因の一つかもしれない。この車の便利さを味わってしまっている住民は元には戻らないのである。しかし高齢化率が高く、いずれ車社会から取り残される高齢者が多く出る山口県、これからの公共交通の在り方に難しい課題を突き付けられている気がした。

 今回、呉線に乗車してみて私の故郷の宇部線、このままでは本当に淋しい気持ちになるのは私だけだろうか?(完)

※路線図は全国路線図ネット、呉線車両はウィキベディア、宇部線車両は鉄道ホビダスのHPに掲載されている写真を使用

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