2025-3-18(AYSA西部部会会員 USI)

3月15日(土)に2024年度「第3回こころを語る会が、宇部フロンティア大学 臨床心理学実習室において開催されました。今回も主催:宇部環境コミュニティー、後援:宇部市教育委員会・ESDうべ推進協議会、協賛:AYSA西部部会・宇部フロンティア大学の枠組みで開催しました。
うべ環境コミュニティーでは、「こころ」に関連するテーマについて、多様な年代、価値観、背景を持つ参加者が本音で語り合う会を開催しました。今回はこころの回復力{レジリエンス}を主要テーマとして、2024年度に開催した第1回~第3回「こころを語る会」の最終回として、本年度の纏め、反省を行うと共に、次年度に向けての本会の方針をご議論いただきました。今回は学期末で高校生・大学生の参加が困難であったため、心理学に興味を持つ社会人・シニア層に、心のしなやかさの強化(レジリエンス、即ちネガティブな心状態からの回復力強化)を如何にして獲得するのかについて、考えることを主目的としました。
AYSA西部部会からは、宮崎会長と北見会員が出席されました。今回は学校が春休み中で、高校生・大学生共に連絡・出席が困難でした。そのため、社会人およびシニア層から18名の参加をいただきました。
プログラム
13:30~13:40 オープニング
13:40~14:10 「心のしなやかさはどこから生まれるのか」 薄井(前半のトーク)
14:19~14:20 休憩と準備
14:20~15:10 ワークショップ「心理学で心のしなやかさを高めるワーク」 三島
15:10~15:15 休憩
15:15~15:40 「パラダイムがシフトしつつある現在の世界で私達はどう生きていくべきか」
薄井(後半のトーク)
15:40~16:00 総括の語り合い

各セッションの要約を以下に示します。
「心のしなやかさはどこから生まれるのか」
薄井 (前半のトーク)
仏教の四苦八苦を例に取り、苦しみの状態から如何にして心を回復させるのか、即ちレジリエンスを強化する方策について、例を挙げながら話を進めました。その中で死を恐れずに今日を幸せに生きるためのキーポイントは「物質にとらわれずに、この世界を自在に観て、自由に生きること」が重要であると結論づけました。これはなかなか難しいことで、たゆまなく自分の心に対する内省を続け、人生の経験を積んでいくことで達成されるものだと思います。
ワークショップ「心理学で心のしなやかさを高めるワーク」
三島

自分の中のレジリエンスに気付き、大切に育てるためのワークとして、以下の3項目を実施しました。
- 心を満たしてくれるものに気付きましょう。
- これまでの心の動きを思い出し、強みに気付きましょう。
- 価値観を振り返り、その価値をどう大切にしていきたいかに気付きましょう
日頃から心理学のワークショップに経験の無い方も、熱心に取り組んでいただきました。
「パラダイムがシフトしつつある現在の世界で私達はどう生きていくべきか」
薄井 (後半のトーク)
時間の制約のため、中断の「回復過程でもっと強靱なこころになるための方策」の具体的な提言はごく短時間の説明でした。後半のトークの主眼展は、現在の「登校拒否児童や生徒の急激な増加」や「引きこもりの増加」など、現代社会の根底に存在する「人々のこころの回復力の弱体化」について議論することでした。私達より数世代前の日本に存在していた先祖を敬い、親・子・孫の家族が助け合って生きていく生活があり、子ども達はその中で自ずから倫理・道徳を身につけて成長していきました。そのような日本の社会では登校拒否などの生徒の出現は稀でした。現在の第2次世界大戦後の平等主義・ゆとり教育の中で育った親たちとZ世代とよばれる子どもとの核家族においては、少子化傾向・登校拒否自動の増加が止まりません。子ども達は情報化時代へのパラダイムシフトにうまく乗せられているだけで、決して幸せな生活を送っているとは言えません。政府の少子化対策などへの税金のばらまき政策ではなく、根本に立ち返った「道徳・倫理を重視した競争的教育システム」を実現する事が肝要です。利他の心に基盤を置く、レジリエンス向上のための教育カリキュラムが必要であり、今回の「こころを語る会」に参加した人たちのチームとしてのレジリエンス向上の取り組みが重要であると結論づけました。
全体の対話と意見交換
トークおよびワークショップの後、全体の対話と意見交換を行いました。「レジリエンスを向上させる上で、四苦八苦を克服する事が重要と思いますが、具体的な方策は何か?」 ⇒ 前半のトークにあった「五蘊皆空」の境地に至ることが苦しみを脱却する上で重要と思われます。これは禅の大悟の境地に通じると思われますが、ものごとをどう観るかは、絶え間ない人生の経験を通じて、自己の内省に反映させていく努力が必要と思われます。
「講演者が主張するこの世界に重畳する余剰次元の世界はどのようなものか?」 ⇒ マルチバースの世界の存在は最新の宇宙物理学で提案されている世界観であるものの、実際はどのような世界であるのかは想像の域を超えません。ただし、死後の世界に対する深い洞察に基づけば、死後の世界を観ることが不可能ではないと言えます。このような境地に立つことにより、現世の苦しみや哀しみを克服する強靱な精神の状態(即ちレジリエンスの強化が達成された状態)になれると考えられます。
「臨床心理学におけるAIの活用がどの程度まで進んでいるのでしょうか?」 ⇒ AIの活用は色々とトライされていると思いますが、実際のセラピーの現場では早急にAIを活用することは危険を伴うと思われます。現時点では注意深くAIの進展を見ていくべきと思います。
意見交換の時間を十分取ることが出来ず、申し訳ありませんでしたが、16時過ぎに流れ解散となりました。
総括と今後の方針について
「第1回こころを語る会」では、心理学に興味を持っている参加者(高校生・大学生・社会人・シニアの方々)が、会の中で異なる世代の小グループを作りユング心理学の日本における先導者であった河合隼雄先生のエッセーを読み合わせました。その後、自分が強く印象を受けた内容をポストイットでホワイトボードに貼りだし、説明すると共に、グループ内および全体の対話を行い、気付きを確認し合いました。
「第2回こころを語る会」は河合隼雄先生、日野原重明先生や臨床哲学者の鷲田清一先生のエッセー等に範囲を広げ、より効率の良い対話を目指して「オープン ブック ダイアローグ」方式を取り入れて、マンネリを防ぐ方策をとりました。第1回~第2回の「こころを語る会」において、参加者の対話・意見交換はかなりの程度行われたと思いますが、約20名の参加者がそれぞれ発表して、対話を行うには十分な時間が確保できませんでした。対話・意見交換が不十分だと感じた参加者が多かったと反省しています。
更に重要な点は、単純にエッセーを読み合うだけでなく、この会の方向性を定める必要があるという点でした。そこで、「第3回こころを語る会」では1年間の総括として従来の対話主体の会ではなく、コーディネーターの薄井と三島が相談の上、「こころの回復力{レジリエンス}」を主題として、今後の会の方針を参加者に問いかける会を企画しました。カウンセリングやセラピーが必要な人たちのケアをこの会がするのは荷が重いので、参加者がそれぞれのレジリエンスを強化するための糸口を見つける事を目的としようと提案しました。また、この会の参加者がチームとして活動して、「チームレジリエンス」を高めていこうとする方向性も、概ね賛同をいただいたと考えています。
各回においてはフロンティア大学の三島准教授が心理学ミニワークショップを担当しました。心理学になじみのない参加者も心理学教室の一端を経験していただいたと思っています。
次年度は十分な対話時間をとれるような工夫を重ねながら、参加者個々のレジリエンス、参加者のチームレジリエンス向上を目指して活動を続けていきたいと考えています。引き続き皆様のご協力をよろしくお願いいたします。なお、次年度も3回のこころを語る会の開催を企画しており、時期は7月下旬、9月下旬、12月中旬の開催を検討しています。
薄井のトークを全て引用するのは容量が大きくなるので、前半および中断のトークの詳細は省きます。最後の「世界の変化に対して、私達はどう対処すべきでしょうか」の部分について要約を以下に示します。
産業革命から350年間、デカルトのいわゆる論理のパラダイムをベースに、自然科学の知識の探求、技術革新、経済学の展開を積み重ねて、近代合理主義の世界を築いてきました。ところが20世紀後半辺りから、明らかに次のパラダイムシフトが始まっていると実感します。情報化社会が今後の世界のパラダイムだと思いますが、情報の氾濫と、それを活用した自由な生き方を若い世代は享受していますが、良いことばかりではありません。例として「分断の世界」が挙げられます。(USAに見られる民主・共和の分断、社会や家庭における分断など。身近なところでは、家や家族の崩壊・引きこもりや登校拒否、結婚しない人々や少子化傾向の増大等が挙げられます。子ども家庭庁などが、税金を多少投入しても、少子化が止まらないことは、既にデータの上でも明らかです。
20世紀後半から現在まで生きてきた、シニア層はある意味では良い時代を生きてきたと思います。これまでの封建的な家の束縛から解放され、豊かになった生活を享受しました。そしてこれまでの日本人の価値観を保持しつつ、日本経済の発展に寄与してきました。
次の世代(現在30~50才の世代 いわゆる第2ベビーブーム世代)は、義務教育における平等主義により、多くの若者は競争社会の厳しさと大切さを体験せずに、成長してきました。同時に核家族化が進み、大量生産・大量消費の生活を疑問に思わずに生きてきました
現在の若者達(いわゆるZ世代)は、情報の取り入れテクニックは上達しても、新時代の情報化社会へのパラダイムシフトに寄与するのではなく、なんとなく時代に流されていきます。これでは、少子化・引きこもり・登校拒否などが問題になるのは、自然の成り行きでしょう。
情報化時代のパラダイムはもっと進むとして、私達はどう対応すれば良いのでしょう。私は状況の打破には、根本的な教育制度の改革と実施が必要であると考えます。ゆとり教育や平等主義の考え方を転換して、倫理・道徳を重視した競争的教育システムに転換すべきであると考えます。
レジリエンス向上のための教育カリキュラムの開発と実施
今後の社会は大変動の時代に入ると予想されます。①政治的な世界的分断化、②地球環境の大幅な変動、③エネルギーや食糧問題の顕在化などが挙げられます。私達はこれらの解決するのが大変困難な問題に直面して、苦しんでいくことと予想されます。情報化時代の新パラダイムにおいては、「こころのケア」が必要となるケースが、今後ますます多発すると思われます。精神医療あるいは臨床心理学的カウンセリングは重要であるが、近い将来、オーバーフローするに違いありません。私達は個々人がレジリエンスを高める努力を続けると共に、今回レジリエンスに関心を持ってお集まりの方々が、しなやかな心を持つ仲間を増やすことが大切です。そして、このような仲間を増やすことによって「チームレジリエンス」が動き始めることを期待しています。
「こころを語る会」のゴーディネーターは、薄井 洋基 (宇部環境コミュニティー理事)と三島 瑞穂 (宇部フロンティア大学准教授)が務めました。
2025-3-19 AYSA西部部会 会員 USI
第3回「こころを語る会」に参加させて頂きました。私は今日まで残念ながら「レジリエンス」(困難をしなやかに乗り越え回復する力)という概念を意識して日々の生活を送ってきておりませんでした。この度の、薄井先生や三島先生の講演でこの言葉の意味を理解し、これまでの私の人生を振り返ってみました。三島先生の「心理学での心のしなやかさを高めるワーク」をお聞きしつつ、自身の「レジリエンス」の気付きがありました。それを大切に育てましょうと。そして「人生満足度曲線からみる自分のリソース」その大切なことは「マイナスからプラスに変化する時」を思い起こすし過去の自分をもっと癒しましょうと。その記憶の中にある自分の価値観を見つけ「レジリエンス」を高める。このワークショップにより、改めてその時その時の「レジリエンス」を経験していたのだと振り返ることが出来ました。そのことで今の自分の価値観を知り、いかに「レジリエンス」を高めていくか。大事な事だと思います。薄井先生の言われる情報化時代の新パラダイムには「こころのケア」を大事にする新しい教育カリキュラムの開発が求められてくるのでしょう。今後の計画も予定されているとのことで多くの方々との意見交換をさせて頂く機会への参加を楽しみにしています。(MYZ)